保険の話① ~ 海外の医療費はとんでもなく高額です
2016/04/22
体調を崩しやすい海外出張
海外出張に行くと体調を崩しがちになります。私は、日本ではあまり風邪など引かないほうですが、海外では良く熱をだしたり、おなかを下したりします。
乾燥した機内での長時間の移動や、気温の急激な変化、日本語以外でコミュニケーションを取らなければならないストレス、食事の量・違いなど、体調を崩す要因は沢山ありますが、日本とは種類の違う病原菌・ウィルスが流行している(自分は抗体をもっていない)ことも理由のひとつかも知れないですね。
とにかく、海外出張中に体調を崩しつつ仕事をこなすのはものすごく大変なので、体調管理をしっかりして、怪しいなと思ったら早めに普段使い慣れている薬を飲むようにしていますが、それでも本当につらい時には、現地の病院にかからざるを得ないでしょう。
現地の病院にかかる場合、言葉の不安はもちろんですが、もうひとつ忘れててはいけない点は、海外の医療費は、日本と比べるととんでもなく高額という点です。
海外での医療費はとんでもなく高額
以下の表のとおり、海外での医療費は非常に高額です。アメリカで重い怪我や重篤な病気のため、手術・入院が必要になれば数百万円、日本の病院へ搬送されるようなことになれば2,000万円くらいの費用を負担することになります。
日本の医療制度がとても手厚いため、日本人はその感覚に慣れてしまっているものの、海外の医療はお金持ちが高い費用を負担してうける特別なサービスという感覚ですので、医療機関から治療費の支払い能力の証明を求められ、証明することができない場合には治療が受けられない可能性もあります。
米国 (ニューヨーク) | 英国 (ロンドン) | シンガポール | 中国 (香港) | 豪州 (シドニー) |
|
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初診料 | 21 | 16~18 | 4~8 | 20~34 | 8 |
手術費 (虫垂炎) | 2,143~3,215 | 600 | 184~321 | 41~178 | 39~160 |
病院の部屋代 (1日あたり) | 214~564 | 55~65 | 3~30 | 9~191 | 24~160 |
入院 保証金 | 必要な場合あり | 389~648 | 244~375 | 414~ | 必要な場合あり |
日本への 移送費 | 8,037 | 2,957 | 1,661~1,784 | 803 | 2,411 |
*) 1日あたり病院の部屋代は、相部屋・個室・ICU等で違いあり。薬代・X線代・検査費は含まず
*) 日本への移送費は、定期便+医師1名・看護師1名の付き添い
(出所)東京海上日動火災
海外出張も「労災」の適用対象
保険は大きく、国が直接運営する「公的保険」と保険会社等の民間企業が運営する「民間保険」に分類され、さらに公的保険は以下の表のとおり分類されます。日本にいる際にも同様ですが、業務・通勤中の病気やケガに対しては「労災保険」が適用され、業務外では「健康保険」が適用されます
労働保険 | 雇用保険 | 労働者が失業した場合や労働者が職業教育訓練を受けた場合に失業等給付を支給する保険 |
労災保険 | 仕事中・通勤による労働者の負傷・疾病・障害又は死亡に対して給付を行う保険 | |
社会保険 | 健康保険 | 病気やケガ、死亡等に備える公的な医療保険 |
厚生年金保険 | 民間企業に勤務する会社員の公的年金保険(自営業及び個人の場合国民年金保険) | |
介護保険 | 高齢になって介護が必要となったとき、医療や福祉サービスの給付を行う保険 |
市場調査、会議・視察、商談、アフターサービス、現地での突発事故の対処、技術習得などの目的で渡航する場合には、「海外出張」とみなされ労災の適用対象となりますが、海外出張中の観光や食事はプライベートな時間とみなされ労災が適用されません。
一方で、海外拠点への赴任などは「海外派遣」となり、海外赴任者として特別加入をしていなければ労災の適用対象とはなりません。また、役員はもともと労災の適用範囲外となるほか、業務外でのプライベートな渡航は健康保険の海外療養費制度から給付を受けることになります。
労災保険の適用に特別な手続きは必要ありませんが、海外で診察を受けた場合には、病院に全額自己負担で支払いを行い、帰国後に「診察内容証明書」「領収明細書」「領収書」「日本語での翻訳文」をそろえて、各保険制度に申請をする必要があります。
「労災」の適用範囲外への対応
現地で病気になって家族を呼び寄せる費用など労災の駅用範囲外の場合や、労災の適用範囲であっても現地での治療費の支払いが困難な場合などの対応として、会社が海外旅行傷害保険に加入するか否かは、会社の任意です。
このため、出張前に自分が勤めている会社の海外出張旅費規程などを確認して、不安であれば、個人でもクレジットカードに加入しておいてカード附帯の保険を活用するか、海外旅行傷害保険に加入しておくか、決めておいた方が良いですね。
まとめ
海外の医療費は、日本とは比べ物にならないくらい高額になるものの、通常の海外出張であれば、「労災」の適用範囲にはなる。ただし、労災の適用範囲外の費用への備えとして、やはり個人でもなんらかの保険は検討しておいた方が安心です。