保険の話② ~ クレジットカード附帯保険か海外旅行傷害保険か
2016/04/22
個人での保険加入も検討しておくべき
前回にも言及した通り、「海外出張」であれば原則として労災保険の対象となります。一方で、「海外派遣」や「業務外の旅行」であれば労災の対象とはならず、健康保険制度の海外療養費として給付を受けることになります。
ただし、労災保険ではプライベートな観光・食事の時間は対象外であったり、健康保険の海外療養費の給付額は、日本国内で同じ傷病を治療した場合にかかる治療費から、患者の自己負担分を差し引いた金額が支給されることになるので、海外の医療費が日本と比べると非常高いことを踏まえると充分な備えとは言えません。
このため、個人でも追加で保険への加入を考慮しておくべきです。これに関しては、以下の3つの選択肢がありますので、それぞれの特徴や留意点について、それぞれ見てみましょう。
- 既に自分が加入済みの生命保険・損害保険の利用
- クレジットカードの附帯保険
- 海外旅行傷害保険に新規加入
まずは自分が既に加入している保険の内容を確認
社会人であれば、仕事上のお付き合いなどで既にいくつかの保険に加入済みのことと思います。まずはこれらの保険で、海外出張中のアクシデントがどの程度カバーされるかを確認しておくことが重要です。
保険は、保険業法によって、以下のように分類されます。
取扱会社 | 補償の対象 | 補償金額 | ||
---|---|---|---|---|
生命保険 | (第一分野) | 生命保険会社 | 人の生存・死亡 | 事前の取決め額 |
損害保険 | (第二分野) | 損害保険会社 | 偶然な事故 | 損害額が上限 |
傷害保険・医療保険など | (第三分野) | 生命保険会社および損害保険会社 | 傷害・疾病など | 契約により異なる |
「生命保険」は、人の生死に関して事前に合意された保険金が支払われる(人の命に値段をつけられないという考え方)のに対し、「損害保険」は、偶然の事故によって生じた損害額を限度とした保険金(損害による焼け太りを防ぐという考え方)が支払われます。また、「第三分野の保険」とは、生命保険・損害保険のいずれにもあてはまらない保険のことで、医療保険や傷害保険などの種類があります。
海外での死亡等に関しては生命保険、海外での損害に関しては損害保険で、原則として、保険契約の約款通りそれぞれの給付対象になりますが、契約の内容によっては、海外での入院は対象外としていたり、日本の病院と同等の医療機関に入院することを条件としていたり、といった例外規定がある場合もあるので、ご自分の契約内容をよく確認しておくことが必要です。
また日本の医療保険は、入院5日目から給付の対象となったりする場合も多いですが、海外では日本と比べ入院日数が短い傾向にあり、1-2日ので退院させられたりすることも多く、この場合は保険給付の対象となりませんので、注意が必要です。
クレジットカードの附帯保険の特徴と留意点
既に加入済みの保険で充分だと思えるのは、おそらく死亡・後遺障害保障くらいだと思いますが、実際のところ、海外出張への備えとして不安になるのは、ケガ・病気での手術・入院代や、飛行機事故などで捜索救援費用や家族の渡航費用等で多額の請求を受けることにならないか、などだったりします。
この点をカバーしておくのであれば、やはりクレジットカードの附帯保険を利用するのが余計な費用もかからず、特別な手続きも必要ないことが多いので、やはり便利です。カード附帯保険の補償内容は、あるカードの例では以下の通りとなっており、カードの種類によって補償金額に差はありますが、おおむねそこそこの金額と言えるのではないでしょうか。
一般カード | ゴールドカード | プラチナカード | |
---|---|---|---|
障害死亡・後遺障害 | 3,000万円 | 5,000万円 | 1億円 |
傷害・疾病治療費用 | 100万円 | 200万円 | 300万円 |
賠償責任 | 2,000万円 | 3,000万円 | 3,000万円 |
携行品損害 | 50万円 | 50万円 | 50万円 |
救援者費用 | 100万円 | 200万円 | 300万円 |
ショッピング保険 | 200万円 | 300万円 | 500万円 |
ただし、カード附帯保険は便利な反面、以下のような留意点もあります。
- 旅行費を当該カードで払っていない場合は補償されない場合あり
- 3ヶ月(90日間)の出張までしか補償されないことが多い
- 病気で死亡の場合は補償対象とならない
- 医療費キャッシュレスサービスがなく、医療機関にかかった場合は立替払いが必要
- カード1枚では金額的に不足する可能性あり(異なる発行会社のカード複数を持つことで、補償金額を増額させるは可能だが、死亡保障・後遺障害補償は合算されない
海外旅行傷害保険の特徴と留意点
ご自身でお持ちのカード附帯保険の内容を踏まえて、充分でないとお考えの場合には、少し割高にはなりますが、海外旅行傷害保険の追加購入を考えても良いかもしれません。実際、海外旅行傷害保険には、カード附帯保険にはないメリットがあります。
- 日本語ヘルプデスクでのサポートが受けられる
- 医療費キャッシュレスサービスがある
- 死亡保障のほか、傷害・疾病、損害賠償等に手厚い保障がある
- カード附帯保険で補償が不足している部分だけを追加契約する商品もある
- 海外旅行傷害保険とカード附帯保険は、死亡保障・後遺障害補償も合算可能
ただし、コストを抑えたいのであれば、空港でギリギリになって加入するよりも、インターネットから事前に加入しておいた方が良いようです。また、事前に加入しておけば、自宅から空港までの移動も補償対象となるといったメリットもあります。
海外出張前の準備と万が一のとき
なにも起こらなければそれに越したことはないですが、現地で何か起きた際にあわてることがないよう、出発前には以下の準備をしておきましょう。
- 保険証券の写しを準備しておく
- ヘルプデスク等の電話番号を確認しておく
そして、万が一、現地で医療機関にかかることになった場合には、病院に行く前にヘルプデスク等へ連絡して、提携医療機関・キャッシュレスで診察してもらえる病院を紹介してもらい、パスポート・保険証券を持参して、診察内容のわかる書類、入院証明書、領収書等を忘れずにもらうようにしましょう。
なお、死亡保険金の支払請求には、現地で発行された死亡診断書や、不慮の事故にあったことを証明する書類(交通事故証明書等)が必要となります。
まとめ
個人での保険加入の検討に際しては、まずは既に加入している保険契約の内容を確認(海外での傷害・疾病がカバーされているか)、次いでクレジットカード附帯保険の内容を確認し、不十分であれば、クレジットカード複数持ちにするか、海外旅行傷害保険への追加加入を検討するようにしましょう。