誤解をまねく英語表現② ~ 確信がもてない
2016/05/11
業績見通しに関する姿勢
海外出張の目的には商談や工場の視察などいろいろとあると思いますが、在外子会社の業績モニタリングを目的とされるかたも多いのではないでしょうか。
私も同様の目的で良く海外出張に行くことがありますが、不正会計のような明らかに違法性がある取引はさすがに多くはないものの、業績や今期見込みの実現可能性を確認していく際には、海外の経営者が根拠があいまいな計画を出してくることもありますし、数字面でも楽観的すぎるなと、日本での経営管理の感覚の違いに驚くことがよくあります。
一方で、海外の経営者からすると、日本的な経営管理は細かすぎて時間を取られるし、本当にこんなこと確認する意味があるの、と、はじめからネガティブな反応が返ってきたりして対応に苦慮することもままあります。
そして、本社管理部門と子会社経営者の間にはさまれて頭を抱えというのは、出張者の“あるある”ですね。こんな雰囲気のときには、ちょっとした言葉遣いの間違いが、深刻な行き違いを招いたりすることもあるので、慎重に対応したいところです。
さて、以下の例文のどこが危ない表現かわかりますか??
Tom: This is our latest forecast for 2nd half. Any questions?
Eitarou: Thanks for your presentation. But your forecast is suspicious.
Tom: Excuse me?! Do you suspect my fraud?
Eitarou: ???
< 訳 >
Tom: これがわれわの下半期の業績に関する最新の見込みです。なにか質問はありますか?
Eitarou: プレゼンテーションを有難うございました。でも、この見通しには疑問がありますね。
Tom: えぇ?! 私が不正を働いているって言いたいのですか?
Eitarou: ???
解説はこちら
これらの単語は、辞書でみるとどれも「疑問がある」「疑わしい」という訳があてられているようですが、ニュアンスは結構、違います。
Suspicious: 犯罪などの意味で、「怪しい」
Doubtful: 単純に、「ホントかなぁ」と疑わしい感じ
Sceptical: 自分なりに検討してみたけども、「懐疑的」
Questionable: 客観的にみて、「疑問をはさむ余地がある」
Uncertain: 情報などが少なくて、「確信がもてない」
「Suspicious」は、犯罪を疑っているようなニュアンスがあり、険悪な雰囲気になりかねないので、かなり注意して使いたい単語です。それ以外でも、うえからしたに行くにつれて、主観的な思い込みで疑問に思う(不躾な感じ)→客観的に検討してみたけどもまだ疑問が解消されない、というニュアンスになっていくのでは、と感じます。
外国人とは出来るだけストレートな表現で話をすべき、と信じている日本人の方も多いですが、海外の経営者は非常にエリート層でプライドも高い方が多いので、実際に、ネイティブ同士の会話でも、相手の主張に異を唱える場合にはかなり婉曲で丁寧な聞き方をしています。
私の場合は、「I’m afraid (申し訳ないですが)」を最初につけたうえで、
Your plan seems questionable to me (あなたの計画は、わたしには、ちょっと疑問の余地があるように思われます)
I feel a little uncertain of your plan (あなたの計画に関して、ちょっと確信が持てないのですよね)
くらいの聞き方をするようにしています。
もってまわった感じの表現なので面倒にも感じますが、母国語以外でのコミュニケーションでもありますし、相手と信頼関係が構築できたと確信できるまでは、丁寧な対応をしておくに越したことはない、とこれまでの経験を通じてつくづく思います。